日本銀行がマイナス金利政策を実施
日本銀行は2016年2月、我が国初となるマイナス金利政策を導入した。リーマンショック以降、断続的に金融緩和は行われてきた。それにも関わらず金利をより一層低めに誘導するのは、景気の先行きに不透明感が出てきたためだ。
マイナス金利政策導入以降、政策効果が不透明なことから、株式市場は乱高下している。しかし、市場金利は着実に低下しており、それと連動して住宅ローン金利も過去最低金利を更新している。
それではマイナス金利政策はマンション所有者にどのような影響をもたらすのであろうか。
住宅ローンの借り換え余地拡大
マンション所有者がまず受ける影響は「金利負担の軽減」だ。今の金利で新しい住宅ローンを借り、今よりも高い金利の古い住宅ローンを完済することで、住宅ローンの金利負担を軽減を享受できる。
例えば5000万円の住宅ローンを、固定金利2%(年利)、30年の元利均等返済で借りたとする。毎月の返済額は約18.5万円で、総返済額は約6650万円だ(ボーナス月の返済割増なし)。
これを金利低下後の固定金利1%(年利)で借り換えたとしたら、毎月の返済額は約16万円、総返済額は約5800万円まで抑制できる。もちろん、借り換えのためには諸費用がかかるので、実際の負担軽減額はこれよりも小さくなるが、数百万円単位で負担の軽減が発生する格好だ。
資産価格上昇の可能性
金融市場の金利が低めに誘導されることで、それに連動して住宅ローン金利も低下してくる。また、銀行が融資格得のための競争を繰り広げることで、優遇金利幅も拡大していることから、金利は史上最低水準を更新し続けている。
これだけ住宅ローン金利が低下してくると、マンションの購入を見合わせてきた層が、住宅市場に流れ込んでくる。住宅市場の需給がひっ迫すれば、住宅市場全体に価格上昇圧力がかかる。
また、不動産投資家たちの行動が活発化することでも、マンション価格には上昇圧力がかかる。全般的な金利低下によって、個人投資家や機関投資家の資金調達コストまでが抑制される。物件の収益性が変わらなければ、「今がチャンス」とばかりに不動産投資に資金を振り向け、不動産相場を押し上げることになるであろう。
以上の理由から、マンションを含む不動産価格には上昇圧力がかかることから、マンション所有者は保有する資産の価値増大が期待できる。
楽観視は禁物
もちろん、マンションの資産価値は日本銀行の金融政策だけで決まるわけではない。そもそも金融緩和が実施されたのは、日本銀行が景気の減速を懸念してのことである。マクロ経済面からは、不動産市況には下押し圧力がかかっていると考えて良いだろう。そのためマンション所有者は、資産価値の動向を楽観視することなく、今後もその価格動向を注視していくことが必要であろう。
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