民法だけではなく、借地借家法の知識が必要
国民生活センターは誌上法学講座、消費生活相談に役立つ民法の基礎知識「借地借家法の基礎 」を11月に発表した。
賃貸住宅契約の場合、民法だけではなく借地借家法の知識が必要となってくる。借地借家法による特別な定めがない場合は、民法に従うこととなる。
例えば、賃貸住宅契約で契約期間を定める場合は1年以上でなければならないと民法で定められているが、借地借家法によって、老朽化で取り壊す予定があるなどの理由がある場合は1年以内の契約を結ぶことができる。
また、民法では賃貸借期間の終了をもって契約は終了し、賃貸人は賃借人に返還を要求できる。しかし、契約が過ぎたからといって追い出すことはできない。
賃借人の住まいの安定を確保する借地借家法
借地借家法によって、賃借人は「住まいの安定を確保」されており、自動更新が原則となっている。よって、賃貸人が更新を拒絶したい場合には正当な理由が必要となっており、正当な理由が認められない限り契約は自動更新される。
この場合の正当な理由については、賃貸人が建物を使用する必要があることや、建物の賃貸借に関する従前の経過、賃借人の建物の利用状況や現況、その地域の現況などを総合的にみて判断される。
また、賃貸人が更新拒絶の手続きをとっても賃借人が建物を明け渡さない場合は、訴訟を起こすことができる。この時、正当な理由が不十分な場合は、いくらの立ち退き料が適切かなども判断される。
賃貸人は一方的に賃料を上げることはできず、双方の協議が必要となる。もし、合意に至らなかった場合は裁判所の調停を利用することができる。
建物の所有者が変わった時、民法では借家権を登記するという方法で新しい賃貸人に対抗することができるが、借家権の登記は賃貸人の協力が必要なため、この制度は機能していない。
そこで借地借家法では、賃借人が建物の引き渡しを受けていれば借家権を主張できると定めている。
定期借家契約について
建物の賃貸借は更新が原則であるため、賃貸人にとっては将来の経済的見通しが立ちにくいというデメリットがある。そこで、1991年に更新を認めない「定期借家契約」制度が導入された。
「定期借家契約」はファミリーレストランなどの店舗を貸す場合に適した契約であり、契約期間内は原則としてその建物を借りる義務が賃借人に発生する。
(画像は『誌上法学講座 借地借家法の基礎』より)

誌上法学講座 借地借家法の基礎
http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201411_19.pdf